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【ゲーム紹介】Mundaun

記事作成日:2024/06/27
最終更新日:---

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  • 2024/06/27
    • 記事公開
 

 

 本記事では、スイスを舞台としたfolk horrorゲーム『Mundaun』(開発元: Hidden Fields、パブリッシャー: Annapurna Interactive)を簡単にのみ紹介しています。



前置き

『Mundaun』とは

スイスの山奥を舞台とした、2021年発売のスイス産のfolk horrorゲーム。PCの他、各種家庭用ゲーム機にも対応。日本語訳もあり。開発元はHidden Fields、パブリッシャーはAnnapurna Interactive。ディレクターなどの詳細は下記参考サイトの『Wikipedia』にまとまっているため、省略します。本作ではスイス国内の公用語の中でも少数派を形成しているロマンシュ語を原語として扱っている点で稀有な作品となっている他、folk horrorであるため、スイスや欧州の伝説や民俗学的な要素を多分に含んだものとなっている特徴があります。本作のインスピレーション源にはスイスの小説作品も絡んでいたりするため、そういったものに興味があるとなお楽しいものとなっています。

 

参考サイト:

  • Mundaun』(※アーカイブ)(最終アクセス日:2024/06/27)
  • 『Annapurna Interactive』 - 「Mundaun」(※パブリッシャーによる本作紹介ページ)(最終アクセス日:2024/06/27)
  • Wikipedia(※英語版)』 - 「Mundaun」(最終アクセス日:2024/06/27)
  • IMDb』 - 「Mundaun」(※データベース)(最終アクセス日:2024/06/27)

あらすじ

 物語は主人公が山奥の村へと向かうバスの中から始まる。彼は祖父が亡くなったことを現地の神父(司祭だったかも……)から手紙で伝えられたのだが、その文面は彼が村に訪れることを拒絶するような内容でもあったのだ。(多分)幼少期の滞在以来久しぶりに訪れることともなった実際に現地に到着すると、祖父は聞いていた話とは違う死に方をしており、しかもその死体は埋葬さえされずに放置されてしまっていた。主人公はわけが分からないまま村に滞在してどういう事態になっているのかを調べていくことになるのだが、たちまちのうちに何やら邪悪なものに悩まされるようになる。そしてその邪悪なものは祖父の不審死と絡み合いながら彼を真相へと、過去へと、悪夢を懐胎する山の中へと導いていくことになるのだった……。

レビュー

 私自身の本作へのレビューに関しては、既にSteam上に投稿しているものを参照していただきたく思います(※レビューはここにリンクを貼っておきます)。レビューでもさんざん言っていますが、私としては取り立ててオススメできる作品では「ない」です。ただし、スイスが舞台のfolk horror作品ということで、一応、紹介だけでもしておこうと思った次第です。概要からして想像がつくかと思いますが、いわゆる「悪魔の橋」の伝説も形を変えつつ取り入れられている作品でもあります。とはいえ、何もかもが全くオススメできないというわけでもないし、作品でやろうとしていること、表現しようとしていることとその題材自体はかなり面白いものはあるということは強調しておきます。ただ全体的に惜しいところが目立ってしまっている作品だと私は思っているという感じです。広げた題材を捌き切れていないというか……。
 作品の中では、「悪魔の橋」伝説然りですが、山というものの象徴性等々、とにかくスイス及び欧州圏のあらゆる伝説・民俗学的な要素がふんだんに取り込まれており、こうしたところの知識があると一層楽しめる内容にはなっています。また、スイスで有名な作家の一人であるイェレミアス・ゴットヘルフの作品『黒い蜘蛛(Die schwarze Spinne、1842年の作品)』もインスピレーション源となっていることは制作サイドからもはっきりと明言されているところでもあります。ちなみにこの『黒い蜘蛛』はゴットヘルフ作品の中でも特に有名なもので(ついでに言えば、「怪奇小説」というジャンルの歴史の中でも重要なもので)、キリスト教的な道徳と悪魔を絡めた内容になっています。物語の仕組みとしては「悪魔の橋」伝説と同じような展開構造を持っているものと言えるため、多分、そういった意味でも本ブログを読んでくださっている人たちには特におすすめできるスイス文学作品なのではないかと思うので、この場を借りてついでに紹介しておきます。

 

『黒い蜘蛛』についての書籍案内: