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【翻訳】詩「An mein Vaterland(我が父なる土地に寄す)」(ゴットフリート・ケラー)

記事作成日:2021/08/01
最終更新日:2021/08/08

▼ 更新記録(ここをクリックで展開)
  • 2021/08/08
    • 誤記修正:見出し「歌詞(原文・翻訳)」→「詩(原文・翻訳)」
    • 加筆修正:「Schweizerisches(スイスの(詩))」の全詩の翻訳記事を作成し終えたため、各詩記事へのナビを追記。
    • 加筆修正:「概要」部分の「一連の「Schweizerisches(スイスの(詩))」~」の一文を追記。
 

 

 本記事では、「Schweizerisches(スイスの(詩))」としてまとめられている一連の詩の一つであるゴットフリート・ケラーの詩「An mein Vaterland(我が父なる土地に寄す)」を自炊翻訳したものを掲載しています。
あくまでド素人がなんとか読んでいるようなものであるため、誤訳箇所などあればお教え頂ければ幸いです。

概要

一連の「Schweizerisches(スイスの(詩))」はすべて、ケラーも深く関与したスイス国内(※厳密にはこのように表現するのは誤りではあるが、ここではそのようにしておく)での宗教改革およびそれに関する内紛を背景にしたものになっているため、19世紀ごろのスイスの歴史を踏まえておく必要がある。ケラー自身はいわゆるプロテスタントないしリベラル派、改革派のほうに立場を置いていた。

 

下記の記事曰く、この「An mein Vaterland(我が父なる土地に寄す)」は、スイス国歌の候補として挙がっていたものの一つであるらしい。1846年にケラーが作詞したものがあり、その3年後に彼の親友であるWilhelm Baumgartnerが作曲したもので、今ではスイスの合唱曲の古典作品の一つになっている。

  • 『Historische Lexikon der Schweiz(HLS)』-「Landeshymne」(※本文ドイツ語)(最終アクセス日:2021/07/29)
  • 『Neue Züricher Zeitung』-「Heimatliebe(記事作成日:2021/07/30)」(※本文ドイツ語)(最終アクセス日:2021/07/29)

 

ちなみに、スイス国歌関係の詩の翻訳も以下の2点を2021年8月現在、記事を作成している。

 

attendre-et-esperer.hatenablog.jp

 

 

attendre-et-esperer.hatenablog.jp

 

「Schweizerisches(スイスの(詩))」の翻訳記事一覧

当ブログでは当該シリーズに収録されている各詩の翻訳もそれぞれ記事として作成している。

  1. An mein Vaterland(我が父なる土地に寄す)現在表示中の記事
  2. Waldstätte(森林地帯)
  3. Jesuitenlied(イエズス会士たちの歌)
  4. Pietistenwalzer(敬虔主義者たちのワルツ)
  5. Apostatenmarsch(背教者たちの行進曲)
  6. Auf Martin Distelis Tod(Martin Distelisの死に寄せて)
  7. Bei Robert Steigers Befreiung und Ankunft in Zürich(Robert Steigerの解放とチューリッヒへの到着に)

ゴットフリート・ケラー(Gottfried Keller)について

19世紀スイスを代表する作家のひとり。紙幣の顔になったこともある。『Der grüne Heinrich(邦題:緑のハインリヒ)』が特に代表的な作品といえるが、この作品を含めケラー作品が翻訳されて国内で出版されたのは20世紀頭ごろ~中ごろにいくつか集中している程度で、現在の日本人にはなじみが薄い作家かもしれない。

(原文・翻訳)

※原文の引用源:WEBサイト『Zeno.org』内「1. An mein Vaterland」(最終アクセス日:2021/07/18)
出典は以下とのこと:Gottfried Keller: Sämtliche Werke in acht Bänden, Band 1, Berlin 1958–1961, S. 128.

原文

O mein Heimatland! O mein Vaterland!
Wie so innig, feurig lieb ich dich!
Schönste Ros', wenn jede mir verblich,
Duftest noch auf meinem öden Strand!

Als ich arm, doch froh, fremdes Land durchstrich,
Königsglanz mit deinen Bergen maß,
Thronenflitter bald ob dir vergaß:(※1)
Wie war da der Bettler stolz auf dich!

Als ich fern dir war, o Helvetia!
Faßte manchmal mich ein tiefes Leid;
Doch wie kehrte schnell es sich in Freud,
Wenn ich einen deiner Söhne sah!

O du Schweizerland, all mein Gut und Hab!
Wann dereinst mein banges Stündlein kommt
– Ob ich Schwacher dir auch nichts gefrommt –,
Nicht versage mir ein stilles Grab!

Werfe ich von mir einst mein Staubgewand,
Beten will ich dann zu Gott dem Herrn:
»Lasse strahlen deinen schönsten Stern
Nieder auf mein irdisch Vaterland!«

翻訳

おお 我がふるさとである土地よ! おお 我が父なる土地よ!
これほどまでに緊密に、私は熱く激しくおまえを愛している。
美しい薔薇よ、私の荒れた渚に向かっていまだに香り続けるのならば、
その時にはあらゆるものが私には色褪せて見えてしまうだろう!

このように私は惨めなもの。ところが朗らかに異郷の地を照らし出している。
おまえのものたる山脈を携えた王者の輝きに比べれば、
そのおまえゆえに 王座で煌めくうわべだけの装飾のことなどは容易く忘却されたのだ。
この貧者がおまえに誇りを振りかざした時には!

このように私がおまえから遠ざかったならば、おお ヘルヴェティアよ!
時折 私は 深い悲嘆に引き込まれるのだ。
ところが 突然に風向きが変われば、喜びのさなかにも在ろう。
おまえの息子をこの目で見た時には!

おお 汝 スイス人らの土地よ、そのすべてが私の宝物であり財産なのだ!
いつか私が脅え震える時がくるのなら
──さもなければ 私が無力であるがゆえにおまえの役に何一つ立たなかったとすれば──、
私に穏やかなる死(※2)を与え給うこと勿れ!

いつか私は自分に向かって己が塵(※3)を振りかけることになる。
その時には私は祈りたいのだ 主人たる神へと。
「汝の最も美しい星よ 光放つままを留めよ
我が現世《うつしよ》での父なる土地へと降り注いだまま」と!

 

※1 「Königsglanz~vergaß:」まで、この2行にわたり訳出自信なし。

※2 厳密には「静かな墓」の意。

※3 「土は土に、塵は塵に」の塵の意。