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【翻訳】詩「Auf Martin Distelis Tod(Martin Distelisの死に寄せて)」(ゴットフリート・ケラー)

記事作成日:2021/08/08
最終更新日:なし

 

 本記事では、「Schweizerisches(スイスの(詩))」としてまとめられている一連の詩の一つであるゴットフリート・ケラーの詩「Auf Martin Distelis Tod(Martin Distelisの死に寄せて)」を自炊翻訳したものを掲載しています。
あくまでド素人がなんとか読んでいるようなものであるため、誤訳箇所などあればお教え頂ければ幸いです。

概要

一連の「Schweizerisches(スイスの(詩))」はすべて、ケラーも深く関与したスイス国内(※厳密にはこのように表現するのは誤りではあるが、ここではそのようにしておく)での宗教改革およびそれに関する内紛を背景にしたものになっているため、19世紀ごろのスイスの歴史を踏まえておく必要がある。ケラー自身はいわゆるプロテスタントないしリベラル派、改革派のほうに立場を置いていた。

 

タイトルにある「Martin Distelis」という人物は、ケラーと同時代人であるリベラル思想を持った画家であるらしい。ケラーの思想から鑑みても、彼はMartin Distelisに対し、仲間意識で以てこの詩を書いているらしいことは窺い知れる。

  • Wikipedia』-「Martin Distelis」(※本文ドイツ語、他言語版あり)(最終アクセス日:2021/08/06)

「Schweizerisches(スイスの(詩))」の翻訳記事一覧

当ブログでは当該シリーズに収録されている各詩の翻訳もそれぞれ記事として作成している。

  1. An mein Vaterland(我が父なる土地に寄す)
  2. Waldstätte(森林地帯)
  3. Jesuitenlied(イエズス会士たちの歌)
  4. Pietistenwalzer(敬虔主義者たちのワルツ)
  5. Apostatenmarsch(背教者たちの行進曲)
  6. Auf Martin Distelis Tod(Martin Distelisの死に寄せて)現在表示中の記事
  7. Bei Robert Steigers Befreiung und Ankunft in Zürich(Robert Steigerの解放とチューリッヒへの到着に)

ゴットフリート・ケラー(Gottfried Keller)について

19世紀スイスを代表する作家のひとり。紙幣の顔になったこともある。『Der grüne Heinrich(邦題:緑のハインリヒ)』が特に代表的な作品といえるが、この作品を含めケラー作品が翻訳されて国内で出版されたのは20世紀頭ごろ~中ごろにいくつか集中している程度で、現在の日本人にはなじみが薄い作家かもしれない。

詩(原文・翻訳)

※原文の引用源:WEBサイト『Zeno.org』内「6. Auf Martin Distelis Tod」(最終アクセス日:2021/08/06)
出典は以下とのこと:Gottfried Keller: Sämtliche Werke in acht Bänden, Band 1, Berlin 1958–1961, S. 133-134.

原文

Sie haben Ruh, die Kutten braun und schwarz,
Die Flattermäuse, Eulen, blauen Kröpfe,
Die Spieße, die Philister und die Zöpfe,
All das verbrannte, zähe Pech und Harz!

Er hat sie scharf gepeitscht und arg gegeißelt
Die faulen Bäuche und die krummen Rücken,
Er hat aus tausend giftgeschwollnen Mücken
Sich gar ein seltsam Monument gemeißelt!

Schaut her, ihr draußen, denen im Genick
Geharnischte Tyrannen tödlich lasten,
Schaut dies Gewimmel ohne Ruh und Rasten,
Den Bodensatz in einer Republik!

Solch einen Abschaum wohlgemut zu zeichnen,
Braucht es fürwahr ein gutes, starkes Herz!
Ihm lohnt es auch des Vaterlandes Schmerz,
Und seinen Namen wird es dankbar eignen!

翻訳

※全体的に私には文意を掴みかねる詩だったが、他の「Schweizerisches(スイスの(詩))」同様に、敵とする彼ら(特にケラーから見ればカトリック等に与する人々のことだろう)を貶め、それに対して真にこのスイスの地を想う自分たちといった構図で作成しているものだと思われる。
たぶん、Martin Distelis氏の作品や人となりを理解してやっと読めるタイプの詩なのだとは思うが、取りあえず、現在の私の力量で読み下した。

 

彼らには平穏がある。あの煤けた茶色の修道服、
あの忙しないネズミたち、フクロウたち、青く染まる胸の裡(※1)
あの幾本もの槍、俗物ども(※2)とお下げ髪ら(※3)よ。
それらはすべて燃えて無くなった。粘つく瀝青と心よ!

それは 鋭く鞭打ち 悪意ある舌鋒で糾弾もする
その腐敗した腹と曲がった背で。
それは 怒りによって膨張した幾千ものブヨたちから生まれ
彫り出された一つの大変奇怪な記念碑なのだ!

こちらを見よ、彼らから離れろ、その首筋へと
武装した暴君どもが致命傷を与えんと圧し掛かるぞ。
この群れには平穏を休息とが欠けているのを見よ。
ひとつの共和政の中にあるこの澱《おり》を!

このように泡《あぶく》が軽やかに模様を描くことで、
何かまことによいものを求めるのだ、強い心が!
彼らはこの父なる土地の痛みにも値し、
そして彼らの名は感謝するに相応しいものにもなろう!

 

※1 「Kröpfe」はたぶん「Kropf」の複数形か? 甲状腺腫や餌袋、オルガンの曲管部などを指すものだが、文意が汲みにくかったため、仮にこのように処理しておいた。「Kröpfer」だと「ムネタカバト」を指すので、青いかどうかはともかく、こちらのほうが文の並びから見てもまだ自然な感じはするが……。

※2 「Philister」は通常、聖書に出るペリシテ人を指す。転じて「俗物」の意。聖書上でもよくは書かれていない。 

※3 もしかすると、転じて「古臭いものたち」という意味で言っているのかもしれない。