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【翻訳】『Rufst du, mein Vaterland(呼べ、我が父なる土地を)』(※ドイツ語版)

記事作成日:2021/07/14
最終更新日:2021/07/15

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  • 2021/07/15
    • 1811年版、1833年版の和訳部分一行目修正:「君は呼ぶのか、我が祖国を?」→「君は呼ぶのか、我が父なる土地を?」
    • 他の箇所も和訳部分修正(1833年版):「万歳、ヘルヴェティア」→「汝に栄えあれ、ヘルヴェティア」
    • 補注追加:1811年版※4、1833年版第1番※1
 

 

 本記事では、過去にスイス国歌的な立ち位置で歌われたこともある『Rufst du, mein Vaterland(呼べ、我が父なる土地を)』のドイツ語版を自炊翻訳したものを掲載しています。前に現スイス国歌である『Schweizerpsalm(スイス人の讃美歌)』を翻訳したついでにこちらもやっておこうかなと芋ずる的に思った次第です。少なくともWEB上だと日本語訳も特になさそう(?)ですし。ただし、ドイツ語が堪能なわけでは全くないため、誤訳等ありましたら、教えていただけると幸いです。
また、現時点では他言語版に取り組んでみるつもりはありません(そもそもイタリア語もフランス語もドイツ語以上に全くできないので)が、読み比べてみると面白いのかもしれません。

1811年版、1833年版のどちらも翻訳しました。

ところで、「Heil, o Helvetia!」の語感がすごくいい。

 

あと、現在スイス国歌として扱われている『Schweizerpsalm(スイス人の讃美歌)』のほうも自炊訳を公開しております。

 

 

概要

スイス国歌についての基本情報は以下のWEBサイトを参照していただきたい。

 

これは、一時期はスイスの国歌的な扱いをされていた曲である。だが、イギリス国歌の『God Save the Queen(神よ女王陛下を守り給え)』と同じメロディーで歌われたものであるようだ。今でもリヒテンシュタインの国歌『Oben am jungen Rhein(若きライン川の上流に)』は、イギリス国歌と同じメロディーを用いている。

参考:『Wikipedia』-「若きライン川上流に」(最終アクセス日:2021/07/14)

歌詞(原文・翻訳):1811年版

※原文の引用源:WEBサイト『Wikipedia(※英語版)』内「Rufst du, mein Vaterland」内「Schweizer Landeshymne (Schweizerpsalm)」(最終アクセス日:2021/07/14)

ところで、適当な歌詞掲載サイトがざっくり探しても見当たらなかったので、『Wikipedia』を引用源とする。うがぐぐ……。あと、ドイツ語版よりも英語版のほうがこのへんが細かかったので、それで英語版のほうを引用源とした。

また、普通に辞書に出てこない単語がこの詩ではいくつか散見された。そうしたものは文脈から類推する形で適当だろう語に置き換えて仮に読んでいる。

歌詞

原文

Ruf'st du, mein Vaterland?
Sieh' uns mit Herz und Hand
All dir geweiht!
Heil, o Helvetia!
Noch sind der Männer da,
Wie sie Sanct Jakob sah,
Freüdig zum Streit!

Ja, wo der Alpen Kreis
Nicht dich zu schützen weiß
O Schweizerland!
Steh'n wir, den Alpen gleich,
Nie vor Gefahren bleich,
Froh noch im Todesstreich,
Für's Vaterland.

Hegst uns so mild und treu,
Zeihst uns so stark und frey(※1),
O du mein Land!
Lust drum, am Tag der Noth,
Sey uns für dich der Tod,
Wenn dir Verderben droht,
Du theures(※2) Land!

Still ruht der Alpensee,
Hoch an der Gletscher Schnee; —
So wir im Land!
Wild tobt er aufgeschreckt,
Wenn ihn Gewitter deckt; —
So wir, zum Kampf geweckt,
Für's Vaterland!

Laut wie der Donner grollt,
Wenn er im Sturme rollt
Durch's Alpenland! —
So der Geschosse Wuth,
Wenn deiner Feinde Brut
Trotzt mit verwegnem Muth(※3),
O Vaterland!

Wie der Lavinen Fall
Stürzt von der Felsen Wall
Furchtbar ins Land:
Stürze Kartätschen-Saat
Rings auf der Alpen Pfad,
Wenn dir ein Dränger naht,
Mein Vaterland!

翻訳文

君は呼ぶのか、我が父なる土地を?(※4)
心と手でもってわれわれは悟ることになる
すべてを神に捧げ!
万歳、おお、ヘルヴェティア(※5)
まだあの男たちはここにいるぞ、
彼らはまるで聖ヤコブのように見える、
歓喜を抱いて戦いに向かうのだ!

そうだ、このアルプスの仲間たちは
(誰かの手によって)おまえのものが守られることを承知してはいない(※6)
おお、スイスの地よ!
われわれは立っているのだ、等しい立場でこのアルプスに。
危機を前に青ざめる者は誰一人として居はしない、
死の一撃の最中にあっても尚 歓びにあるのだ、
この父なる土地のために。

われわれをこのように穏やかさと二心の無さとで抱き育み、
われわれをこのように力強く意のままに攻め立てる、
おお、汝、我が大地よ!
故に心満ちよ、苦しみの日中《ひなか》にあろうとも。
我らをおまえのために存在せしめるためならば死をも与えよ、(※7)
(我らの魂が)堕落へと脅かされてしまうような時には。
汝の神威ある土地よ!

アルプスの湖ではただ静かに、
凍った水面の周りで雪がうず高く積もっている。──
そしてわれわれはそうした土地の中に住まうのだ!
無秩序に猛り狂いもしよう、劫《おびや》かされ、(※8)
雷雨に被われるような時には。──
このようにしてわれわれは、戦いへと目覚めたのだ、
この父なる土地のために!

鈍く轟く雷鳴の如き大音声がするのだ、
この嵐の中で彼らが声を上げるときには
このアルプスの大地を貫いて!──
そうしてそれは矢の如き鋭さにもなろう、(※9)
おまえの敵の卵の殻が破れてしまうような時には
豪胆なる口(を開き)迎え撃とう、
おお、父なる土地よ!

なんという雪崩が
岩肌の表面から凄まじくも落ちてゆくことか
この土地の恐ろしさは、
散弾銃で種蒔くように滂沱の如く落ちゆき
このアルプスの小道で戦おう、
何か迫り来る者が近付いてくる時には。
我が父なる大地(※10)よ!

※1 「frey」が分からず。ここでは仮に「束縛のない、意のままにfrei」としたが、たぶん古いドイツ語(またはスイスドイツ語)が用いられているのかもしれない。ちなみに1833年版ではこの箇所は「frei」になっている。
※2 「theores」も分からず。たぶん、神を讃えるような意味合いであることは伺える。たぶん、これも現在では一般的に用いられないものか。言葉の感じからラテン語から、「theo-(神の) + rēs(物、事象、支配etc)」あたりの意味合いかなあと思ったので、仮にそうとして「神威ある」と読んでいる。
※3 「Muth」が分からず。仮に古代サクソン語などの「muth」としている。ゲルマン語「munþ」と同根で、英語の「mouth」、ドイツ語の「mund」などもこの系統と同じ。
※4 スイス人たちに語りかけている意味での「君は呼ぶのか」という意味合いで取りあえず訳しているが、この詩の中で「du(おまえ/君/あなたetc...)」と呼びかけられているのは土地そのものである(もしくは神的な何かのイメージが加担されたそれである)。よって、この一行目は、「汝は叫ぶのか、我が父なる大地よ?」という呼びかけの意味にも取れる。とはいえ、どうやら日本語では、タイトル部分の和訳を見る限りでは、一般的に、広く人々に呼びかけているかのように解釈するのが普通なようなので、取りあえずそれを踏襲している。 ※5 Helvetiaはローマ時代のスイスの呼び名。現在でも用いられる。ナポレオンの時代辺りにはヘルヴェティア共和国も樹立している。
※6 この辺り訳出自信なし。
※7 この行はかなり意訳している。
※8 意訳。
※9 意訳。
※10 「Vaterland」は詩の中で何度も登場するが、「父なる土地(もしくは大地)」と表現した。一般的には「祖国」と訳されるが、スイスの成り立ちは割と複雑なので、このようにした。

歌詞(原文・翻訳):1833年

※原文の引用源:WEBサイト『Wikipedia(※英語版)』内「Rufst du, mein Vaterland」(最終アクセス日:2021/07/14)

上記の1811年版と同じく、適当な歌詞掲載サイトがざっくり探しても見当たらなかったので、『Wikipedia』を引用源とする。うがぐぐ……。あと、ドイツ語版よりも英語版のほうがこのへんが細かかったので、それで英語版のほうを引用源とした。

1番

原文

1.
Rufst du, mein Vaterland?
Sieh uns mit Herz und Hand
All dir geweiht!
Heil dir, Helvetia!
Noch sind der Söhne da,
Wie sie Sankt Jakob sah,
Freudvoll zum Streit!

翻訳文

1.
君は呼ぶのか、我が父なる土地を?(※1)
心と手でもってわれわれは悟ることになる
すべてを神に捧げ!
汝に栄えあれ、ヘルヴェティア(※2)
まだあの息子たちはここにいるぞ、
彼らはまるで聖ヤコブのように見える、
歓喜に満ち満ちて戦いへと向かうのだ!

※1 1811年版※4参照。
※2 1811年版※5参照。

2番

原文

2.
Da, wo der Alpenkreis
Nicht dich zu schützen weiss
Wall dir von Gott,
Stehn wir den Felsen gleich,
Nie vor Gefahren bleich,
Froh noch im Todesstreich,
Schmerz uns ein Spott.

翻訳文

2.
ここにいる、このアルプスの仲間たちは
(誰かの手によって)おまえのものが守られることを承知せず(※1)
神の御許で猛り狂おうぞ、
われわれは立っているのだ、等しい立場でこの岩肌に。
危機を前に青ざめる者は誰一人として居はしない、
死の一撃の最中にあっても尚 歓びにあるのだ、
何かしらの嘲弄が我らを苛めんとしようとも。

※1 1811年版※2参照。

3番

原文

3.
Nährst uns so mild und treu,
Hegst uns so stark und frei,
Du Hochlands Brust!
Sei denn im Feld der Not,
Wenn Dir Verderben droht,
Blut uns ein Morgenrot,
Tagwerks der Lust.

翻訳文

3.
われわれをこのように穏やかさと二心の無さとで育み、
われわれをこのように力強く意のままに抱く、
汝のその高原(という名)の胸で!
苦しみの野の中にも在ろう、
(我らの魂が)堕落へと脅かされてしまうような時には。
或る日の朝焼けに我らは血を流すのだ。
日々の勤めへの楽しみのために。

4番

原文

4.
Sanft wie der Alpensee,
Sturmlos am Gletscherschnee
Weht unser Mut.
Graus tobt der See geschreckt
Wenn ihn Gewitter deckt;
So wir zum Kampf erweckt:
Wut wider Wut.

翻訳文

4.
アルプスの湖の如く穏やかに、
凍る水面に積もる雪に向かい、吹きすさぶほどでもないほどの
吐息を我らが勇気は吹かん。
この湖が劫《おびや》かされて脅威のために荒れ狂うのは
雷雨に被われるような時。
このようにしてわれわれは、戦いへと目覚めたのだ、
憤怒には憤怒を振るうべく。

5番

原文

5.
Und wie Lawinenlast
Vorstürzt mit Blitzeshast –
Grab allumher –
Werf in den Alpenpfad,
Wenn der Zerstörer naht,
Rings sich Kartätschensaat
Todtragend schwer.

翻訳文

5.
そして雪崩の如く
降りしきる稲妻と共に勢いをつけて突進し──
辺り一面を全て穿ちながら──
このアルプスの小道へ投げ出すのだ(、己の身を)。
破壊者が近付いてくるような時には、
(そうして我らは)散弾銃で種蒔くようにして戦おう
重苦しい死を荷物として。

6番

原文

6.
Frei, und auf ewig frei,
Ruf' unser Feldgeschrei,
Hall' unser Herz!
Frei lebt, wer sterben kann,
Frei, wer die Heldenbahn
Steigt als ein Tell hinan.
Nie hinterwärts!

翻訳文

6.
自由であれ(※1)、そして永遠に束縛されぬほうへと向かうのだ、
叫べ、我らの合言葉を、
鳴り響かせよ、我らの心に!
自由に生きよ、消え行くことも厭わぬならば(※2)
自由であれ、戦士の道に在る者よ。
ひとりの「英雄《テル》」として高みへ行け。
何があろうとも後退ることなかれ!

※1 この詩でいう「自由」には「自立していること」のニュアンスが前提としてある。
※2 「sterben」は、「死ぬ、消滅する」の意味。ここでは「消え行く」と表現した。多分、5番の歌詞にあるように、「窮地のときには命さえも投げだせるのならば」という意味も含んでいるのだろう。

7番

原文

7.
Doch, wo der Friede lacht
Nach der empörten Schlacht
Drangvollem Spiel,
O da viel schöner, trau'n,
Fern von der Waffen Grau'n,
Heimat, dein Glück zu bau'n
Winkt uns das Ziel!

翻訳文

7.
だが、もしもこの平和を笑う者がいるのならば
怒り、激しい戦へと向かおう
息苦しい戯事の(ために)。
おお、ここにはたくさんの美しいものがあるのだ、絶対に。
この武器から遠く離れることを恐れよ、(※1)
故郷よ、巣作ることがおまえの幸福になるのだ
我らにかの目標を指し示せ!

※1 この行から最後まで訳出自信なし。