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【翻訳】詩「Das Mädchen von Orleans(オルレアンから出でしかの乙女)」(シラー)

記事作成日:2021/09/16
最終更新日:なし

 

 本記事では、シラーーの詩『Das Mädchen von Orleans(オルレアンから出でしかの乙女)』の自炊翻訳を掲載しています。

概要

 この詩は、いうまでもなくジャンヌダルクを謳ったものである。シラーの戯曲『Die Jungfrau von Orleans(※通称『オルレアンの少女』)』(1801年)に関連する詩作かと思われる。
 この戯曲のほうは日本語訳のものが岩波書店から文庫の形で出版されており、近年(※2021年現在)では版が重ねられたばかりなのもあって入手しやすい状態にある。歴史上または一般的な創作物では汚辱にまみれた悲劇的な結末を迎えることになるジャンヌダルクが気高さを失わぬままに逝く点が本作の一番の特徴だと言えよう。

詩(原文・翻訳)

※原文の引用源:WEBサイト『Zeno.org』内「Das Mädchen von Orleans」(最終アクセス日:2021/09/16)
出典は以下とのこと:Friedrich Schiller: Sämtliche Werke, Band 1, München 31962, S. 459-460.

原文

Das edle Bild der Menschheit zu verhöhnen,
Im tiefsten Staube wälzte dich der Spott,
Krieg führt der Witz auf ewig mit dem Schönen,
Er glaubt nicht an den Engel und den Gott,
Dem Herzen will er seine Schätze rauben,
Den Wahn bekriegt er und verletzt den Glauben.

Doch, wie du selbst, aus kindlichem Geschlechte,
Selbst eine fromme Schäferin wie du,
Reicht dir die Dichtkunst ihre Götterrechte,
Schwingt sich mit dir den ewgen Sternen zu,
Mit einer Glorie hat sie dich umgeben,
Dich schuf das Herz, du wirst unsterblich leben.

Es liebt die Welt, das Strahlende zu schwärzen
Und das Erhabne in den Staub zu ziehn,
Doch fürchte nicht! Es gibt noch schöne Herzen,
Die für das Hohe, Herrliche entglühn,
Den lauten Markt mag Momus unterhalten,
Ein edler Sinn liebt edlere Gestalten.

翻訳文

人類の化身たるあの気高きひとを嘲罵すべく、
深々と煙る塵埃の中 愚弄がおまえを転がすのだ。
美しいものを携えながらも永遠に あの滑稽なるものは戦争へと導かれることになり、
それは天使や神が傍におられることも信じられず、
不信の心によって己の宝を奪われもしよう。
妄念が戦を求め そして信仰は傷を負うのだ。

だが、おまえ自身は、若い種から生まれ出でた、
一人の敬虔なる女羊飼いといえるもの それがおまえなのだ。
この詩作(※1)は ならば おまえの神の正義にも届こう、
星々(※2)を目指し おまえと共に舞い上がり、
一つの栄光を携え おまえのものを包み込もう。
この心がおまえを創り上げ、おまえは不滅の生を得るのだ。

それはこの世界を愛するもの。この光の終わりを黒く染めゆき
塵埃の中へとこの気高さを導くもの。
ああ しかし 恐れる事勿れ! それはいまだ美しい心を与え、
それはこの高貴なるもののために、壮麗なる灯《ともしび》となる。
この虚栄の(※4)市場がモーモス(※5)を育もうとも、
気高き想いは気高きひとを愛するのだから。(※6)

※1 この詩以外にも戯曲『オルレアンの乙女』も指していると思われる。
※2 厳密には形容詞「ewgen」が付いているが、これがどういう意味か調べられず。
※3 「das Erhabne」も※2同様意味が調べられなかったが、仮に「Erhaben」として訳した。
※4 本来、「広々とした」の意味だが、意訳した。
※5 ギリシア神話で非難や皮肉を表わす神のこと。
※6 第三スタンザでは「それ」は「er」で表記されているため、「彼女(=ジャンヌ)」と訳しても良いのかもしれないが、全体的に「おまえ」にジャンヌとシラー自身を重ねているのかなと解釈したため、あまりややこしい訳文にならないように曖昧な言い方をするようにした。もちろん、第一スタンザの「それ」はまた別のもの(=愚弄する人々)である。