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【翻訳】詩「Bei Robert Steigers Befreiung und Ankunft in Zürich(Robert Steigerの解放とチューリッヒへの到着に)」(ゴットフリート・ケラー)

記事作成日:2021/08/08
最終更新日:なし

 

 本記事では、「Schweizerisches(スイスの(詩))」としてまとめられている一連の詩の一つであるゴットフリート・ケラーの詩「Bei Robert Steigers Befreiung und Ankunft in Zürich(Robert Steigerの解放とチューリッヒへの到着に)」を自炊翻訳したものを掲載しています。
あくまでド素人がなんとか読んでいるようなものであるため、誤訳箇所などあればお教え頂ければ幸いです。

概要

一連の「Schweizerisches(スイスの(詩))」はすべて、ケラーも深く関与したスイス国内(※厳密にはこのように表現するのは誤りではあるが、ここではそのようにしておく)での宗教改革およびそれに関する内紛を背景にしたものになっているため、19世紀ごろのスイスの歴史を踏まえておく必要がある。ケラー自身はいわゆるプロテスタントないしリベラル派、改革派のほうに立場を置いていた。

 

タイトルにある「Robert Steigers」という人物は、ケラーと同時代人であるリベラル思想の急進派閥に属した医者であり、政治家でもあった、Jakob Robert Steigerのことかと思われる。ケラーの思想から鑑みても、彼はRobertに対して仲間意識で以てこの詩を書いているらしいことは窺い知れる。
この詩のはじめのほうで死刑宣告について触れられているが、どうやら1845年ごろにこの思想活動の中で捕らえられ、一度、死刑宣告を受けたことがあるようだ。そしてそれを逃れたりもしたことから、あくまでも私の憶測だが、ケラーは彼に対して一種の英雄視をしていたのかもしれない。

  • 『Historical Dictionary of Switzerland』-「Jakob Robert Steiger」(※本文ドイツ語、他言語版あり)(最終アクセス日:2021/08/07)

「Schweizerisches(スイスの(詩))」の翻訳記事一覧

当ブログでは当該シリーズに収録されている各詩の翻訳もそれぞれ記事として作成している。

  1. An mein Vaterland(我が父なる土地に寄す)
  2. Waldstätte(森林地帯)
  3. Jesuitenlied(イエズス会士たちの歌)
  4. Pietistenwalzer(敬虔主義者たちのワルツ)
  5. Apostatenmarsch(背教者たちの行進曲)
  6. Auf Martin Distelis Tod(Martin Distelisの死に寄せて)
  7. Bei Robert Steigers Befreiung und Ankunft in Zürich(Robert Steigerの解放とチューリッヒへの到着に)現在表示中の記事

ゴットフリート・ケラー(Gottfried Keller)について

19世紀スイスを代表する作家のひとり。紙幣の顔になったこともある。『Der grüne Heinrich(邦題:緑のハインリヒ)』が特に代表的な作品といえるが、この作品を含めケラー作品が翻訳されて国内で出版されたのは20世紀頭ごろ~中ごろにいくつか集中している程度で、現在の日本人にはなじみが薄い作家かもしれない。

詩(原文・翻訳)

※原文の引用源:WEBサイト『Zeno.org』内「7. Bei Robert Steigers Befreiung und Ankunft in Zürich」(最終アクセス日:2021/08/06)
出典は以下とのこと:Gottfried Keller: Sämtliche Werke in acht Bänden, Band 1, Berlin 1958–1961, S. 134-135.

原文

Mit deinem Adelsbriefe wohl versehen,
Dem Todesurteil mit dem argen Riß,
Sehn wir dich jugendlich und stark erstehen
Aus deines Grabes kalter Finsternis.
Des Unglücks Feuertaufe auf dem Haupte,
Den letzten Kettenring noch an der Hand:
So schreitest du durch dieses jungbelaubte
Und doch so tief gebeugte Vaterland!

Und wo du gehst, da weckst du auf den Bergen
Die hellen Freudenfeuer ohne Zahl!
Doch hinter dir, da stehn die röm'schen Schergen,
Geblendet noch vom unverhofften Strahl:
Der Apostat, des Name nun zertreten
Im Staube an des Volkes Sohlen klebt,
Indes den deinen es mit lautem Beten
Und kindlich dankbar zu den Sternen hebt!

Es grüße dich das goldne Licht der Sonne,
Dich grüßt die Freiheit und das Vaterland!
Es grüßen dich mit heißem Schlag der Wonne
Viel tausend Herzen, freudig zugewandt!
Nimm hin in vollem Maß des Volkes Liebe
Und seinen Dank, den es den Helden zollt:
Der Männer Lärm und jubelndes Getriebe,
Des Weibes Träne, die im stillen rollt!

Nimm hin die Lieder und die Festgesänge!
Es lauscht ein heil'ger, starker Zorn darin!
Die bittre Klage in dem Lustgedränge,
Den Dorn, den diese Rose birgt, nimm hin!
Denn was dem müden Volk das Herz durchzittert,
Legt's heimlich in die Grüße mit hinein;
Ob's nun in Freude oder Leid gewittert:
Es wird nicht minder ein Gewitter sein!

翻訳

※この詩も全体的に文意が掴みにくいものだったため、誤訳の可能性が高い。たぶん、「おまえdu」ないし「そいつes」を誉め称える讃歌なのかなと判断して書き起こした。つまり、この詩はスイス国内で発生していた宗教対立を踏まえたもので、Jakob Robert Steigerを賛美するものになっている。

 

おまえの叙爵証は授けられるだろう、
悪しき対立が生み出したこの死刑宣告によって。
我々は憧れるのだ おまえの墓の冷たい闇から生じる
おまえの若々しさと力強く生み出すものとを。
その頭上に災厄たる砲火が降り注ぎ、
この最後の鎖の輪はいまだその手をめぐりゆく。
そうしておまえは進むのだ 若々しい葉で覆われた場所を通り抜け
そうでありながらも 父なる土地に深々と身をかがめ!

それで おまえが行くのは、ここだ この山脈の
数を欠いた 利発なる 祝いのための篝火の上で目を覚ますのだ!
だが おまえの背後、そこにはローマの狗が立っている。
そいつらは この思いがけぬ光によって 目をくらませられもしよう。
この背教者(※1)の、その名は今では踏み躙られ
塵埃の中で民衆らの靴底にへばりつく。
おまえのものは 騒がしい祈りの声らと共に そして星々へと無邪気に感謝の口上を上げている!

そいつはミルク色に輝くおまえの太陽の輝きに挨拶をする。
おまえのその自由と この父なる土地に挨拶をするのだ!
至福による熱い一撃と共にそいつはおまえに挨拶をし
幾千もの数え切れぬほどの心臓は、喜びのほうへと向かおう!
民衆たちの愛に満ち満ちたもののほうへと連れて行け
そして そいつの感謝は、あの英雄へと示されよう。
男たちの喧噪と歓呼の賑わいや、
女たちの涙が、もはやこれ以上流れることを止めることで!

この歌を そして これを祝い歌うことを紡ぎ続けよ!
そいつはより神聖なるものへと耳を澄ませ、それ故により強い怒りへと向かいゆく!
この苦い嘆きは あの愉悦の雑踏の中にあり、
この棘は、あの薔薇が秘めし棘。それを なお掴み行け!
あちらへと携え行きながら この挨拶たちを密やかに横たえよ。
いまではそれが原因となって 喜びの中で もしくは悲嘆の中で 雷雨が降りしきる。
かつてのものよりも劣ったものではない雷雨となり!

 

※1 ここで背教者と言われているのは、ローマの狗と言われたカトリックの人々のことではなく、Jakob Robert Steigerのほうを指している。つまり、カトリックから見れば彼は背教者という扱いになるため。そのためここでは、人々に踏み躙られながらも天に感謝を述べる彼の様子が謳われているのである。