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【翻訳】詩「An die Günstigen(この好意的なものたちに寄せて)」(ゲーテ)

記事作成日:2021/07/27
最終更新日:なし

 

 本記事では、ゲーテの詩「An die Günstigen(この好意的なものたちに寄せて)」を自炊翻訳したものを掲載しています。私が一番好きな詩と言っても過言ではないものなので、原文も読みました。厳密には、高橋健二氏の訳になる「心優しき人々に」が好きなのではありますが、とはいえ、原文を味わうのも大切なことですので……(あと、実際に原文をちゃんと読んでみると意味合いの汲み方の違いが見出せたりもしますし)。
あくまでド素人がなんとか読んでいるようなものであるため、誤訳箇所などあればお教え頂ければ幸いです。

「An die Günstigen」について

 ここでは直訳的なところにしておきますが、少なくとも日本語訳でも高橋健二訳だと「心優しき人々に」となっているこの詩ですが、英語訳でもタイトルは一般には「TO THE KIND READER(この心優しい読み手へ向けて)」となっているようです。英語版もやや雰囲気が違って面白いです。
英語版の例:『Wikisorce』-「TO THE KIND READER.(※翻訳者は明記されず)」(最終アクセス日:2021/07/27)

 また、上記にもありますが、この詩の高橋健二訳がほんとうにいいので、機会があればぜひ目を通していただきたいところです。第二スタンザ部分が特に好きです。これ以外のゲーテ詩の訳もすごくいい。いいぞ……! 2021年現在も新潮社で文庫で出ていますが、個人的には、これの古書の、旧字体が使われているものが特におすすめです。
参考(最終アクセス日:2021/07/27):国立国会図書館サーチの目録情報 | 新潮社の書籍情報

歌詞(原文・翻訳)

※原文の引用源:WEBサイト『PROJEKT GUTENBERG』内「An die Günstigen」(最終アクセス日:2021/07/27)
出典は記載されず。『Wikisorce』の場合はこちら参照。

原文

Dichter lieben nicht zu schweigen,
Wollen sich der Menge zeigen.
Lob und Tadel muß ja sein!
Niemand beichtet gern in Prosa;
Doch vertraun wir oft sub Rosa(※1)
In der Musen stillem Hain.

Was ich irrte, was ich strebte,
Was ich litt und was ich lebte,
Sind hier Blumen nur im Strauß;
Und das Alter wie die Jugend,
Und der Fehler wie die Tugend
Nimmt sich gut in Liedern aus.

 

※1 「sub Rosa(秘密に)」はラテン語の言い回し。(会議の)秘密を守る誓いに薔薇の花を置いた(もしくは吊るした)習慣があった。直訳すると「薔薇の下で」。

翻訳

詩人は沈黙することを好まず、
群衆に己を示すことを望むものだ。
賛辞も非難も存在して当然のものだろう!
誰も好き好んで散文の中で懺悔はしないものだが、
ところがわれわれはムーサイの宿る聖なる森の沈黙の中で、
薔薇の花の誓いにかけて秘密の話を打ち明けることを幾度も繰り返す。

私が犯してきた過ち、私が行ってきた努力、
私が感じてきた苦しみ、そして私の生に関するなにごとをもが、
ここではこの花束をなす手折られた花々に過ぎない。
そうしてこの老いもあの若さと同じように、
そうしてこの過ちもあの徳と同じように、
歌が終わるころには、私自身をよろこびへと導くのだ。