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【翻訳】ソネット「Die Tellenschüsse(物語の一矢)」(ゴットフリート・ケラー)

記事作成日:2021/07/18
最終更新日:なし

 

 本記事では、ゴットフリート・ケラーのソネット「Die Tellenschüsse(物語の一矢)」を自炊翻訳したものを掲載しています。くわしい執筆経緯は知りませんが、スイスの歴史に触れた作品のようです。ケラーの時代のスイスは民主化運動でいろいろ揺れていたので、そのあたりが関連関連するのかも(※確信はありません)? また、二段目以降は特にウィリアム・テルを意識したものなのかもしれません。厳密にはそれそのものというよりも、そのイメージを重ねたスイス人たちという趣きのように感じますが。タイトルも「テルの一矢」という意味もあるのかもしれません。
あくまでド素人がなんとか読んでいるようなものであるため、誤訳箇所などあればお教え頂ければ幸いです。

ゴットフリート・ケラー(Gottfried Keller)について

19世紀スイスを代表する作家のひとり。紙幣の顔になったこともある。『Der grüne Heinrich(邦題:緑のハインリヒ)』が特に代表的な作品といえるが、この作品を含めケラー作品が翻訳されて国内で出版されたのは20世紀頭ごろ~中ごろにいくつか集中している程度で、現在の日本人にはなじみが薄い作家かもしれない。

歌詞(原文・翻訳)

※原文の引用源:WEBサイト『Zeno.org』内「7.Die Tellenschüsse」(最終アクセス日:2021/07/18)
出典は以下とのこと:Gottfried Keller: Sämtliche Werke in acht Bänden, Band 1, Berlin 1958–1961, S. 54-55.

原文

Ob sie geschehn? das ist hier nicht zu fragen;
Die Zierde jeder Fabel ist der Sinn.
Das Mark der Wahrheit ruht hier frisch darin,
Der reife Kern von allen Völkersagen.

Es war der erste Schuß ein Alleswagen,
Kind, Leib und Gut, an köstlichen Gewinn:
Blick her, Tyrann! Was ich nur hab und bin,
Will ich zum Kampf mit dir entgegentragen.

Und du kommst leer und heillos, wie du bist,
Und lässest fühllos dir am Herzen rütteln,
Und spiegelst höhnisch dich in meinem Blut?
Und immer: Nein!? – Verlaufen ist die Frist.
Verflucht sei seines Hauptes ewig Schütteln!
O zweiter, heil'ger Schuß, nun triff mir gut!

翻訳

※全体的に素直に翻訳するのは難しく感じたため、やや意訳的に翻訳しています。

 

それが実際に起きたことなのかどうかだと? それをここで問うことはしない。
この誉れ高き装飾が全て作り話であることを意味しているのかどうかなどということは。
まことの真髄はここで瑞々しさをもって微睡みにあり、
成熟した本質は群衆らの語り(※1)にこそ見出せる。

子供、己が身や財産が、素晴らしい利益とやらのために
極度の危険にあるならば、最初の一撃を振るうことにもなる。
こちらを見よ、暴君よ! 私がどれほどのものを所有し存在しているのかを。
この戦いへとおまえを引きずり込むことが私の望みなのだ。

そうしておまえは空虚で救いがたい態度を見せるが、それがおまえという存在なのだ。
心揺さぶられるものに対してもおまえは冷淡なまま微動だにもせず、
私の血の中には軽蔑するおまえが写り込むだけなのか?
それでいつまでも「いや《Nein》」だと!?──猶予期間は過ぎ去ったぞ。
おまえのその頭がいつまでも恐怖に震え続けるように呪いあれ!
おお そうして次には、聖なる一撃を、こうなった以上は私の敬虔なる一撃を撃ち込むだけだ!

 

※1 民話や伝説のこと。