当記事では、ミゲル・デ・セルバンテス著『ドン・キホーテ』の映像化作品(※調べられた範囲でパロディのものも含む)を一覧化したものを公開しております。
最終更新日:2020/07/03
前置き
作成したきっかけは、遡ること2020年6月半ば過ぎ、思い付きでヨハネの祝日に『テリーギリアムのドン・キホーテ(The Man Who Killed Don Quixote)』を観るついでに、他のドン・キホーテ映像化作品も何か合わせて観て独りで祭をしようとかなり軽い気持ちで思い付いたことがきっかけでしたが、結果的には思ってたよりかなり底なし沼だったため、当日にはなんとか『テリーギリアムのドン・キホーテ』が観れる程度で、あとはリスト作成にとにかく6月の残りを費やすことになったのでした。この場を借りてごり押ししておくと、『テリーギリアムのドン・キホーテ』は大変おすすめな作品なので、未視聴の方はよろしければご覧ください。
きっかけはその程度のもので、短期間で片付けることを目標として作成したものですが、とはいえ、最低限まとまったデータとしては満足のいく出来にまでは仕上げたため、公開することに至った次第であります。多分、2020年7月頭現在、国内向けに何等かの形でこういった一覧は作成されていないはずですので、多少は誰かのお役に立てられれば幸いと思います。
最後に、データを今後定期的に見直して更新するかについてですが、これに関しては未定です。ただ、更新した場合は当記事内でそれだと分かりやすく付記はしますので、そこでいつごろに最終更新されたものなのかを見定めていただけたらと思います。
一覧リスト
かなり長大なものになったため、Excelファイルへのリンクを貼るに留めておきます。共有するために『Googleドライブ』を使用しておりますので、各々で自己責任にてダウンロードしてご覧ください。
リストをご覧になる際に踏まえていただきたいポイントはファイルの冒頭のほうに端的に書いております。それ以外に細かいところで何か特筆事項がある場合は、セルにコメントを貼り付けています。
ダウンロード:『ドン・キホーテ映像化作品目録』(Excelファイル、約200キロバイト)(最終更新日:2020/06/30)
参考サイト
上記のリストを作成するのに参照したWEBサイトは以下のとおりです。
また、リスト作成時には時間の都合上で参照できませんでしたが、有益そうなその他の参照サイトも紹介しておきます。
- 『USC Libraries』-「研究ガイド」-「Don Quixote de La Mancha: DQ and Film」
南カリフォルニア大学のドン・キホーテの映画関係のリソースリスト。検索するのにオススメのサイトの紹介などをしている。 - 『ニューサウスウェールズ州立図書館』-「Cervantes Collection」
ニューサウスウェールズ州立図書館が作成しているセルバンテスコレクション。出版された関連書物が中心のようである。検索結果のリストはこれです。
まとめ
作成したリストから、多分ポイントになるだろう箇所を抽出しました。以下の表もExcelファイルの中に入っていますが、Excel以外の類似ソフトで閲覧した際に関数などがうまく作動するか不安なため、念のためここにも載せておく次第です。
以下のデータは最終更新日が2020/06/30のデータに基づきます。
総数
データ合計数:428件
プラス、上記総数には入れませんでしたが、NDL所蔵の映像資料77件もありました(428件のほうのデータと比較検討したりする時間がなかったりなんだりで分けています)。
NDLデータを含まない上記合計数のうち、日本語タイトルの分かるもの(=国内で流通したことのあるもの)は66件でした。
なお、データについてですが、TVシリーズなどでそのシリーズそのものが全体的にドン・キホーテに関するものの場合はデータ数を1件とし、そのうちの1話~数話のみがドン・キホーテに関するものの場合は別個にデータを作成しました。
制作年代別
上位3位に限り、別個に制作年別の表も用意しています。折りたたみで収納していますので、「▶」を押してください。
年代 | 合計 | ||||||||||||||||||||||
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1890 | 1 | ||||||||||||||||||||||
1900 | 10 | ||||||||||||||||||||||
1910 | 8 | ||||||||||||||||||||||
1920 | 10 | ||||||||||||||||||||||
1930 | 10 | ||||||||||||||||||||||
1940 | 18 | ||||||||||||||||||||||
1950 | 11 | ||||||||||||||||||||||
1960 | 55詳細
|
||||||||||||||||||||||
1970 | 49 | ||||||||||||||||||||||
1980 | 38 | ||||||||||||||||||||||
1990 | 49 | ||||||||||||||||||||||
2000 | 84詳細
|
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2010 | 74詳細
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2020 | 2 | ||||||||||||||||||||||
不明 | 8 |
制作国別
合計数の多い順に並べています。
国名 | 合計 |
---|---|
スペイン | 129 |
アメリカ | 108 |
フランス | 57 |
イギリス | 36 |
イタリア | 26 |
ドイツ(東西時含む) | 18 |
ソ連 | 10 |
不明 | 10 |
オーストラリア | 8 |
カナダ | 7 |
チェコ共和国 | 7 |
メキシコ | 6 |
韓国 | 6 |
ベルギー | 6 |
日本 | 5 |
ユーゴスラビア | 5 |
ポーランド | 5 |
ポルトガル | 5 |
ブラジル | 4 |
フィンランド | 4 |
ブルガリア | 4 |
スイス | 4 |
オーストリア | 3 |
オランダ | 3 |
スウェーデン | 3 |
ロシア | 3 |
イスラエル | 2 |
ジョージア | 2 |
デンマーク | 2 |
ハンガリー | 2 |
中国 | 2 |
チェコスロバキア | 2 |
スロバキア | 1 |
南米(※制作表記ママ) | 1 |
ルーマニア | 1 |
インド | 1 |
セルビア | 1 |
ヨーロッパ(※制作表記ママ) | 1 |
チリ | 1 |
プエルトリコ | 1 |
ルクセンブルク | 1 |
クロアチア | 1 |
個人的におもしろく思ったポイント
かなりの雑記になりますが、今回の作業をしていて気になったポイントをざっくり挙げていきたいと思います。
まず、思ってた以上に映像化作品が多い。
最初は本当にただの軽い出来心で作り始めたのですが、どんどん膨らんでいくデータ数に震えていました。日本から見た感覚だと、そもそも国内で簡単に視聴ができる範囲で純粋にドン・キホーテを映像化したような作品はそんなに無い印象だったので、その感じをつい軽率にも引き摺ってしまっていましたが(考えてみればそんなはずないんですよね)、50件くらいの見積もりが100件に、200件に……と膨らんでいくのには驚きました。こんな大変な目に遭うとは……。
圧倒的「制作国:スペイン」の多さ。
スペインという国は大変にセルバンテスを推しているところがあるらしく、今回収集した範囲だととにかくスペインが多かったです(参考サイト二つがスペインによるものなので、そこも踏まえなければいけませんが)。参考サイト外の拾いきれなかったもの(パロディを含む)もきちんと収拾できたとしたら、もっと特にスペインの数字は膨らむのではないかなと思います。
あと、スペインは1936~39年の間に内戦をしていたのですが、その間の制作は一切ないものの、内戦後初のスペイン映画の題材に『ドン・キホーテ』が選ばれていたのもおもしろく感じました。どういう作品に仕上がっているのか、個人的にはかなり気になるところです。
次点で「制作国:アメリカ」が多かったこと。
スペインの次は、ヨーロッパの国のどこかか中南米あたりが多くなるかなと思っていたのですが、意外にもアメリカが圧倒的に差を開いて多かったです(これももちろん、参考サイトにアメリカのサイトを用いているという点を踏まえなければなりませんが)。
ヨーロッパという括りで総計すればヨーロッパのほうが上位には食い込みますが、中南米は総計してもまったく届かないのも予想外でした。植民地政策の歴史を踏まえると、そのへんの文学の影響も強く残っているのかなあと思っていたので。
どうやら原作の『ドン・キホーテ』は新大陸発見といわれるようなころから間もなくにはもうアメリカ大陸にも本が移動していたようで、目立つ関係図書館等がアメリカにあったりすることも考えると(※上記参考サイト参照)、もしかしたらそういった歴史的背景を踏まえつつ考えられるところもあるのかもしれません。全くそのへんは調べたことがないので、先行研究等は私は把握できていません。
パロディのしやすさ
これも今回収集した範囲でしか言えないことですが、『ドン・キホーテ』が純粋にそのまま(ないし一部を切り取る形で)ほとんど原作準拠で映像化するというよりも、パロディのしやすさとしても好まれている作品なのかなと思いました。あくまで参考サイトのあらすじを読んで主観的に判断しただけですが、それでざっくり数えたところ、パロディに当たりそうな作品数は
社会問題とからめること
上記のパロディの延長の話になりますが、今回まとめ作業をしていて目についたのが、ドン・キホーテを社会問題と絡めつつパロディをするような作品が少なからずあったことでした。中東問題や過去の歴史の暗部、戦争と向き合うためにドン・キホーテが利用されているようなものがあり、そういったことをするのにもちょうどいい題材にもなりうるのだなあと感心しました。アメリカなどは西部劇と絡めているものがいくつかあり、そこも興味深かったです。
夢見る狂気の男が社会問題に関わって何かを解決しようとするという話の傾向が高いように見受けられますが、なんというか、そのへんの曖昧模糊とした希望や期待が描かれることにいささかの切なさも感じられるような気がして、ドン・キホーテという作品の持つ底知れなさも感じた次第です。
そこまでやる余裕はありませんでしたが、今回の一覧と大まかな世界史・スペイン史などの流れを比較すると、何か発見があるのかもしれないなとも思いました。